災害発生時に作成するBCPの進め方
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この度の、東日本大震災では多くの企業が被災し、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、企業においては地震の影響で部品の生産や供給が停止しました。業界に大きな影響を与えます。今現在も、たいへんな苦労をされている企業が多いかと思います。
ここでは、災害に強い中小企業を作るための具体的な災害対策を解説します。
過去に連続した巨大災害
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地震・津波
発生年月日 M 名称 死者
不明 津波 震度 観測地点
(1943)昭和18年9月10日 7.2 鳥取地震 死者 1,083 6 鳥取県 鳥取市吉方
(1944)昭和19年12月7日 7.9 東南海地震 死・不明1,223 ○ 6 三重県 津市島崎町など2点
(1945)★昭和20年1月13日 6.8 三河地震 死者 2,306 ○ 5 三重県 津市島崎町
(1946)昭和21年12月21日 8.0 南海地震 死者 1,330 ○ 5 和歌山県 串本町潮岬 など17点
(1948)昭和23年6月28日 7.1 福井地震 死者3,769 6 福井県 福井市豊島
(1995)平成7年1月17日 7.3 阪神淡路大震災 死者6,437 7 兵庫県 神戸市
気象庁より
原爆
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★(1945) 昭和20年
8月6日 広島原爆 人口35万人(推定)のうち死者約14万人
8月9日 長崎原爆 人口24万人(推定)のうち死者約14万9千人
ウィキペディアより
BCPとは
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中小企業において、BCP(Business Continuity Plan)=「事業継続計画」という言葉は、まだ聴き慣れない言葉かもしれません。
BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
図表1のように、緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことがきでなければ、特に中小企業は、経営基盤が貧弱なため、D事業縮小し従業員を解雇しなければならない、または、E廃業を決断しなければならない状況も考えられます。前の状況に戻れたとしてもC長期復旧になり、機会損失をおこしてしまいます。出きることなら、取引先、仕入先、従業員にとっても完全停止にならずに操業率は低くても操業を継続できA売上上昇やB短期復旧が望まれることは間違いありません。
組織が危機を適切に対応した場合、その株価は長期的に値上がりし、これに対して、危機を適切に管理しなかったと認識された会社の株価は下落し、一年後にもまだ回復していなかった。最近の調査ではリスク、BCP BCM 及びガバナンスに予算をかける企業ほどそれぞれの部門で収益率が高いことが示された。このことは、BCPがコストではなく投資であることを示しています。
海外からすると、日本の取引企業が災害に対してどのように対応しているのか不安が高まっていることは間違いありませんので、海外取引をしている企業には、BCPを要求されることが増えることが予想されます。要求される前に策定していることが重要です。完成していなくても、策定途中であるだけでも有効と考えます。途中の段階でも提出することができれば、取引先との協議につなげることができ、信頼関係の維持につなげることが出来ます。この度の大規模災害を機にBCP導入に対する重要度が世界的に大きく変化することは間違いありません。
BCMSの構築ステップ BS25999-2より
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BCMS策定のための計画
BCMSの適用範囲(製品・サービスの選択)、目的、手順
BCM方針
経営資源の提供(人、設備、情報、金)
BCM要員の力量・教育訓練記録
事業インパクト分析(BIA)
リスクアセスメント(RA)リスク分析
事業継続戦略 継続オプション選択(代替手段・バックアップ・冗長化など)
インシデント対応体制 (初動対応)
事業継続計画及びインシデントマネジメント計画(復旧対応)
BCM演習(テスト・訓練)
BCM維持及びレビュー
内部監査
BCMSマネジメントレビュー
予防処理及び是正処置
継続的改善
図表2
BCPの中小企業的取り組み法(鉄は熱いうちに打て)
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全国の企業で、多かれ少なかれこの東北関東大災害の影響を受けていることと思います。
何かのインシデント(事象)が発生すると、脅威または機会が訪れます。リスクには2面性があります。今回は、自動車や器械などの製造業やサービス業は脅威にさらされ、資材関連、インフラ整備の企業は注文が増えることになるでしょう。また、一時的な増産が後にひずみを起こすこともありますから注意が必要です。
さて、私は今すぐBCPを作成することをおすすめいたします。通常BCPを社内で推進しようとすると非協力的な経営層や社員に悩まされる場合がありますが、今のこの時期ならば、積極的な意見交換の中で、BCPを作成することができるでしょう。
とは言え、BCPは、一度策定すれば良いものではありません。計画策定後も定期的に訓練し検証することが重要です。災害時にどう社員の安全を確保するかなどを記載した書類作りにとどめず、平時からの教育訓練や定期的な見直しが求められます。通常ならば、BCPをさらにBCMS(Business Continuity Management System)まで引き上げて、図表2ように策定運用を行ないます。
しかし、中小企業では、BCP策定の人材確保も難しく社員からの理解も得にくいのが現状です。そこで特別に災害発生時の今だから出来る特別なBCP構築プロセスを考えましたので(図表3)に示します。
この度の災害への対応策を早急に作成することを主眼に置く。一度で完璧なものを作ることをせず、出来上がったら早速訓練を実施し、脆弱な部分や抜けている箇所を次回の見直しで解決し、毎年の継続的改善実施で徐々に強固なBCPを目指す。見直すことでレベルの高い自社流の強固な計画を立てることができる。第三者評価を取得する場合に最も重要な項目は、BCPの出来が良いかどうかは判定基準では無く、継続的な改善が実施できる仕組みができているかどうかです。
ツ黴
災害発生時BCP構築
このような通常とは逆のプロセスを考案した背景には、実際にBCP作成中の山形県の企業で勉強会実施中に東北関東大震災が発生し、その会社で何が重要で何をすべきなのかを体験し、どうすれば、社員全員参加型でBCPを構築できるかを考えた末、方針や目的より、現場の今のホットな気持ちをくみ上げることを実施した結果、多くのリアルな意見が上がり、BCP作成の輪が広がったことによります。その時の詳細データは、またの機会にお話いたします。
では、①~⑧までを細かく見ていきましょう。
① 見直しの日を決める
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忙繁期や決算月を考慮し見直しの日を決める。人事異動や退職などでBCP策定に一生懸命かかわった人員がいなくなり、忘れ去られるケースも考えられますので必ず見直しを行なう。
少なくとも年一回、または、人事異動後、インシデント発生後、新ITシステム導入の後、市況の変化、訓練の実施の後に行なうようにし、最新の状態に保たれることを確実にしなければなりません。
まず、担当者を決め、BCPの策定・運用推進に取り組んでいることを全ての従業員に周知する
BCPの運用は全ての従業員が対象になりますし、実際の緊急時には従業員の行動が計画の成否を左右するのでBCPの運用に対して従業員の参加意識を高める必要があります。
② 初動対応・安否確認・情報収集伝達公開・IT
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初動対応=災害が発生した場合にまず何をするかの初動対応を決定する。これは、地震の場合、津波を伴う場合、台風の場合、洪水の場合、大規模停電の場合など、その時によって異なるが、社員の命を守るための避難路の確保、機器の安全停止、炉やボンベの温度や圧力低下、高さ制限を含めた災害対応計画にする。
また、ガスや薬品が漏れ出し、火災や爆発などの二次災害を発生させぬよう、また、最悪発生した場合の連絡体制と救助作業、被害の拡散防止計画も同時に行なう必要があります。計画時に館内のすべての危険箇所はリーダー全員が直接目で確認し、消火器などの調達などは簡単に済むことなので、早めに済ませておきたい。
今回実際に揺れや地震津波の影響を受け、少しの揺れなどが恐怖となっている社員も多く、ゆれる蛍光灯に恐怖がよみがえり、足がすくんでしまい動けなくなる場合もあります。精神的なケアまで含む計画は社員を大切に思うトップの気持ちが伝わるものになるでしょう。
図表4は、地震後翌営業日にアンケートを実施した生のデータ218件の一部です。参考にしていただきたい。(毎年避難訓練をしている会社ではありますが、新雇用により避難訓練未経験のスタッフが20%ほどいた→避難訓練の時期の検討)
日本大地震においての気づきのアンケート
(山形県100名の精密機器加工組立工場で地震の直後停電)
キャスターつきの作業台など地震の時は動きやすいいざという時に台車が避難の傷害に。
壁際の背の高い棚は足が固定されていなく倒れると避難の妨げに、ツールラックなども。
機械課の非常口から逃げようとしたが雪で出られず意味がなかった。
緊急地震速報が聞こえるようにしそれが流れたら逃げるなどのマニュアルがあったらいいと思う。
蛍光灯の揺れがひどかったため落下したらどうしようと思った。
揺れが治まるまで隠れている場所がなかったので直ぐに外に逃げたが良かったのか不安だった。
揺れて通路に重い平台車が散乱すると思われます。避難する時に障害になるのでは。
避難するドアに人が集中すると思われます。何箇所かに分けて避難しては。
避難する建屋のドア、シャッター及び窓は開けておくこと。
安否確認
社内の人員の安否確認、本支店、工場間の安否確認も最重要でありますが、今回分かったのは、従業員の家族の安否確認です。実際の現場では、ほぼ全員が携帯電話などで、家族への安否確認を試みた。通じる場合もありますが、通じない場合もあります。日ごろより家族間の安否確認と災害時の集合場所などを教育することも企業の役割と考えよう。 通信手段は、館内放送、内線電話、インターネット、携帯電話、携帯メール、無線機、中継局経由型簡易無線機、衛星電話、安否確認専用ソフトなどあります。私が提案したいのは、社員の自宅の電話、携帯電話、携帯メール、家族の誰かの携帯電話、奥様・ご主人・親御さんの連絡先を知っておくことです。もしもの事態に備えての重要なことです。もちろん取り扱いは慎重にする必要があります。
情報収集伝達公開
決断には、災害の程度、範囲、津波や火災などの情報収集が必要になる。地震が起こった後に、津波が来るかによって、避難方法が変わってくる。災害と同時に停電になっても光通信やモバイル通信回線が生き残っている場合があります。
社内のサーバーはUPS(無停電電源装置)に接続されており停電時の電源が確保されている。通常停電から3分~5分後に自動的に停止するように設定されている。今回の地震でUPSは、停電でもかなりの時間確実に電源を供給していることを確認した。そこで、インターネット操作や館内放送に必要な電源をUPSから確保することをすすめる。具体的には、ルーター、ハブ、光通信接続部、電話交換機、放送用アンプ、テレビなどに接続することにより、外部情報を取り込み館内の社員に伝達することができる。UPSは雷対策にもなるので一石二鳥だ。さらに、インターネットが通じていれば被災状況を取引先に一斉メール配信やホームページで公開することで客先からの信用度は向上する。もちろん事前に公開方法マニュアルと内容文のフォーマットを作っておく必要があります。決して、災害の最中に客先のリストアップをして文章を作成出来るものではない。
UPSを調達し適切に接続することは、停電に対しては有効な手段です。
災害時連絡体制
情報伝達に欠かせないのが、BCP連絡体制です。これは同時に推進体制となる。もちろんトップは社長ですが、必ずしも、各部署の職長がリーダーをしなくても良い。職歴は短くても、声が大きく元気がいい者を適役にすることが出来る。だんまりした職長よりも、部署内の人員を安全な場所へ導く能力に優れていたりする。
初動対応
1 災害発生時の対応 設備の緊急停止 避難 待機 通路確保 指示 構内放送
データ保守 設備保守
2 人命救助 けが人の救助 病院への搬送(事前に病院複数ヶ所決める)
3 安否確認 社長、社員 通知連絡手段 代替連絡方法
勤務時間内の場合、勤務時間外の場合
4 災害情報収集 災害情報 震源地、津波、停電の範囲、水害、雷、事故による
交通・ライフラインの状況
5 緊急停止点検 工場生産設備ライン 物流倉庫の倒壊 配管など
二次災害防止活動 通電時の点検
6 被害状況の確認 構内点検 点検箇所 点検担当
7 ITデータの点検 緊急停止、安全停止、再開手順、バックアップからの復旧手順
8 出社可否
帰社決断 出社させるかどうか決断 制限出社人員
帰社タイミング 居残り人員
9 重要取引先への連絡 売り先、仕入先へホームページ、メール、電話、FAX
10 BCP(事業継続計画)
発動 BCPの手順どおり継続再建活動を実施する判断
ITシステム
安全停止、停止ログの確認、安全開始、バックアップの確認、バックアップからの解凍、ミラーシステムへの移行、正常移行確認などをシステム会社に丸投げにしている場合が多いが、システム会社としては、光やADSLは別会社、電話も別会社、PC調達も別会社、サーバーの保守メンテナンスのみなのになぜか全てが任されており対応できないのが現状です。
そこで、全てを一社窓口にすればよいのか、やはり、分散することもリスク回避につながります。
最低でもサーバーの安全点検マニュアルを作成し、電源テスト・バックアップ解凍テストを定期的に行なうことが一番です。
ほぼ全ての企業でITなくしては、ありえないはずなのに、中小企業ではその部分が脆弱です。
100名以下の企業2百社のITシステムを見てきたが、理想的な形になっているのはごくわずかです。ISMSやBCPの専門家に診断してもらいましょう。
今、クラウドコンピューターシステムがサービスとしてかなり安価で提供されるようになってきた。まずは部分的に有効利用したいものです。
③災害発生後業界内で起こっていることを克明に記録「災害記録」
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今の危機的状況で顕在化されたことを、記録に残すことが一番重要なことであり素早くできることです。記録係を任命し、館内の危機的な場所、流動する製品、流動しない製品、仕入れできない材料部品、自治体の対応、インフラの整備にかかった日数、社員の健康状態、安否確認にどれだけの時間がかかったかなどの記録を残すことが重要です。
インフラの中で一番重要なのが電気です。電気が通じなければ、水道のポンプも動かない。さらに、完成品を搬送する燃料の問題、途中の交通事情、受け入れ先センターの被災などあらゆることが複合的に起こっており、次なる、増産体制に向けて、生産をしたいが、仕掛かり在庫の置き場に困ることも現実の話です。現実に自社の関連業界で何が起こっているのかを出来る限り克明に記録することは、後の財産になることは間違いない。
④影響を受けやすい業務プロセスを分析
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現在も、依然、資材調達が困難な状況に陥っておられることでしょう。資材調達のボトルネックをリストアップする必要があります。大企業は、資材調達を多角的に分散する傾向にあり、適正在庫数の考え方もリードタイムを短くするかリスクをとるかの両天秤だといえます。
例えば、調達リスクを考えてみる
□ 調達先の経営的危険度(経営状況)
□ 調達先の災害的危険度(自然災害の確立、国際情勢の影響)
□ 調達距離(数キロ~海外)
□ 調達期間(当日入庫~半年)
□ 調達交通機関(陸路、空路、海路、燃料)
□ 調達最低最高ロット
数千点から数万点に及ぶ、仕入れ品の全てにおいて、上記のことを分析することは困難でありますが、課題が顕在化している今では、代替策が取れないか、仕様を変更してでも調達先を分散できないか検討材料となる。
東北地方では、一時、ガソリンスタンドで燃料が手に入らない、または、3時間待つのはあたり前になった。雪国では、ガソリンが底尽きてしまうことは、生死にかかわることなので、日頃から燃料が半分以下にならないように心がけておられるようだが、今回はまったく予想しない事態に陥った。
製造業の場合、受注→仕入→加工→外注→受入検査→組立→検品→梱包出荷→納品
これらの中で、現在直接影響を受けていること、間接的に影響を受けていること、災害記録をもとに、業務プロセス別のリスクをリストアップする。
⑤重要業務の決定
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通常は製品・サービスの範囲を決定してその製品・サービスの提供を維持するための重要業務を分析するが、中小企業は、請負業務が多くほぼ全ての製品サービスが重要となることが多い。
分けることそのものが困難な状態です。その中で重要度を分析するより、仮に今回の災害で想定できるボトルネックを重要業務と決定し、その業務の維持にどれだけの資源を投入できるかを考える。
⑥基本方針を文書化し全体を調整
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中小企業が生き抜くためには、従業員とその家族の生命や健康を守った上で、事業を継続して顧客の信用を守り、売上げを維持する必要があります。事業と売上げが確保できれば、従業員の雇用も守ることができます。同時に地域経済の活力を守ることにもつながります。BCPを策定し運用する目的は、緊急時においても事業を継続できるように準備しておくことで、顧客からの信用、従業員の雇用、地域経済の活力の3つを守ろうとするものです
行動指針
企業同士で助け合う
中小企業では、日常的に業務を分担したり、情報交換したりと助け合いの中で事業を行っています。緊急時において同業者組合や取引企業同士、被害の少ない企業が困っている企業を助ける、そのことが結局は自社の事業継続にもつながります。(3SK48=整理整頓清掃活動+危機管理の向上を図るチームワーク型の異業種勉強会)
緊急時であっても商取引上のモラルを守る
協力会社への発注を維持する、取引業者へきちんと支払いをする、便乗値上げはしない、こうしたモラルが守れないと、企業の信用が失墜し、工場や店舗が直っても事業の復旧は望めません。
地域を大切にする
中小企業では、顧客が地域住民であったり、経営者や従業員も地域住民の一人であったりします。企業の事業継続とともに、企業の能力を活かして、被災者の救出や商品の提供等の地域貢献活動が望まれます。社内には消防団に入っている社員も少なからず居ることと思います。地域での活動を優先させ、出社義務をなくしてあげることも社会貢献となります。
公的支援制度を活用する
わが国では中小企業向けに、公的金融機関による緊急時融資制度や特別相談窓口の開設などの各種支援制度があります。一番検索しやすいサイト→ J-NET21(独立行政法人中小企業基盤整備機構)図表5 資金があれば、再建できます。 一般的には、事態が起こった後よりも事前にかける経費の方が少なくてすみます。トップの考え方次第です。
⑦見直しの日までに実施する項目の戦略決定
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災害が起きた後は、出来れば完全停止せずに、復旧しなければならない。前述の山形の会社で聞いてみました。各社自社流の考えを立案いただきたい
社長
・ 井戸を掘り地域に解放
・ 近隣へのトイレの開放
・ 建屋の補強
・ 無線機の導入
工場長
・ IT関連の復旧勉強会の実施
・ UPSの導入接続テスト
・ 避難訓練の時期の検討及び訓練実施
・ 備蓄品の再検討
・ 既にあった、連絡網の見直し
・ 上下水道配管・配電、エアー、イントラネットの最新図面
機械加工職長
・ 設備の修理企業との災害時対応事前契約を結び災害時復旧計画に理解を求める
・ 簡単な設備ならば、社員で水平バランスの調整が出来る技術を継承する
・ 設備の安全停止、配電盤の確認 通電後に異常が起こらないよう点検項目を整備
・ 災害時の声かけ
次は、文書のまとめですが、差込形式でまとめると、更新が楽に出来ます。
・ 基本方針
・ 適用範囲の決定
・ リスク分析
・ 重要業務決定
・ 初動対応
・ 復旧戦略
・ 訓練
・ 継続的改善計画
の順序で綴じます。BCPの文書ができた段階で策定に関わったメンバー、策定に関わっていない主なスタッフにも読んでもらい、ミスや疑問点、課題などを洗い出します。
BCP担当=文書の作成 配布ルール 取り扱い 返却のルール決定
BCP文書の取り扱い
配布 BCPは所持、使用を認められた者(原則として経営者、策定メンバー、チームメンバー)に電子ファイルで配布するが、色別に紙に印刷をし、部署で必要な項目のみが書かれているBCP文書を紙文書として取り出しやすいところに保管すること
取扱い 配布されたBCP文書は自宅と職場に各一部保管し、机上や社内に放置しない。
許可無く複製を外部に持ち出さないこと
返却 BCP所持者はその所持資格を失った時点(人事異動、退社)で速やかにBCPを返却すること
⑧訓練の実施 継続的改善
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A机上でできること
BCPチームメンバー及び職長、緊急時の役割を与えられているスタッフが参加し机上訓練をミーティングルームでおこなう。地震や台風などのシナリオを準備し時間軸を正確にどう解決するかを討議します。「正解」は存在しないが参加者が導いた回答は、参加者に自信と解決力を与えます。
B簡単にできること
電源、IT遮断テスト 安否確認テスト 設備の安全停止テスト
C建屋単位でやること
操業を停止し安全地帯まで避難すること、取引先などステークホルダーも参加してもらう
職務に戻り、業務、ITシステム及び設備の安全開始を行なうまでを行なう
D全社でやること
本支店間で同時に行なうことは現実問題として難しいので、順番に実施するその際、本支店間の安否確認などの連絡だけは同時に実施すること
訓練実施後は問題点課題を抽出するためのアンケートを実施し、班長とは聞き取り面接を行い、職長クラスではワーク型ミーティングの実施により継続的に改善する
最後に
この度の東北関東大震災は、縦550km幅200kmに渡る大規模災害であり、被災の程度で
①津波被害地区、
②地震被災地区、
③停電地区
の3つに大きく分けられます。(原子力発電の影響を考えると別の見方がある)
①,②,③の今後の発生頻度は、③の発生頻度が一番高い、これからも該当する企業も相当数に上る、③の場合でも事前準備があるかないかで大きな差が出来ている。BCPがあり発動することにより、社員の自信と会社への信頼感につながることは間違いない。災害発生後の企業では社員スタッフが一丸となって一気に発展する傾向があります。